ラグビーのTMOとは?ビデオ判定で確かめられる5つの場面とトライ前の2フェーズ、2026年7月の新プロトコルで観戦がわかる見かた

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トライかと思った瞬間にレフリーが指で四角を描き、スタジアムの大型ビジョンにリプレーが流れ始める。ラグビーを見ていると、こうした「TMO」の時間に何度も出会います。X(旧Twitter)でも、検証映像が中継や大型ビジョンに映り、レフリー同士の会話まで流れるので見ている側も納得しやすい、という声が見られました。一方で、何を審議しているのか分からないという投稿もあり、待ち時間の意味がつかめないまま終わってしまう人も多いようです。

この記事では、ワールドラグビーの競技規則第6条と、2026年7月1日から実施されているTMOプロトコル、日本ラグビーフットボール協会の記事などをもとに、TMOが何を確かめられて、どこまでさかのぼれるのかを整理しました。仕組みを知っておくと、映像確認の時間が「次に何が起きるかを予想する時間」に変わるはずです。

目次

TMOとは?映像で判定を助けるマッチオフィシャル

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TMOは「テレビジョンマッチオフィシャル(Television Match Official)」の略で、映像機器を使ってレフリーの判定を助ける役割です。単なる録画の担当ではなく、マッチオフィシャルの一員として位置づけられています。まずは競技規則での扱いと、実際にTMOを務める人の言葉から見ていきます。

競技規則6.15の5つの状況と、部屋の中の「ビデオ判定をするレフリー」

ワールドラグビーの競技規則(日本語版)の第6条には「テレビジョンマッチオフィシャル」という項目があり、試合主催者はTMOを指名できると書かれています。対象は、インゴール内でのボールのグラウンディング、グラウンディングやボールがデッドになる際のタッチまたはタッチインゴール、ゴールキックが成功したか疑いがある場合の3つがまず挙げられています。さらに、トライにつながる、またはトライを妨げる反則が起きたかもしれないとマッチオフィシャルが考える場合と、罰の確定を含む不正なプレーを加えた計5つです。

続く6.16では、TMOを含むマッチオフィシャルの誰もがTMOによる見直しを提案でき、見直しはそのときに定められたTMOプロトコルに従って行うとされていました。条文が挙げているのはマッチオフィシャルだけで、チームや選手が判定のやり直しを求める仕組みは書かれていません。Xでも、TMOはレフリーからの確認要請を受けて発動するものだと説明する投稿がありました。なお、この項目には「世界的試験実施ルール」の表示が付いており、規則が試行を重ねながら更新されている分野だとわかります。

同じ第6条には、TMOの時間に関わる意外な規定もあります。6.29では、エリートラグビーの試合でウォーターキャリアーが競技区域に入れるのは、レフリーがプレーを中断して負傷やTMOによる映像確認などの長い停止になったときか、トライが得られたときに限るとされていました。映像確認の間に選手が水を受け取っている光景は、この規定に沿ったものというわけです。

立命館大学の情報サイトshiRUtoでは、産業社会学部の松島剛史准教授が、ラグビーのビデオ判定は1990年代から始まったと言われると紹介しています。グラウンドにはレフリー1名とアシスタントレフリー2名がいて、TMOは部屋の中にいる「ビデオ判定をするレフリー」という位置づけだと説明されていました。試合全体を裁くのは、TMOを使った判断を含めて主審です。松島准教授は、TMOが使われるのはトライかどうか、タッチやタッチインゴールを越えたか、反則や不正なプレーの有無、ゴールキックの成否といった場面で、「TMOの利用は、以上のような場面だけに制限されています」とも述べていました。

日本ラグビーフットボール協会の「みんなでラグビー」には、リーグワンでTMOを務める小山知洋さんのインタビューが2025年3月17日付で掲載されています。小山さんは、トップリーグでTMOが始まったときに声をかけられたのがきっかけだと話し、レフリーよりTMOを担当しているときのほうが緊張すると答えていました。理由として挙げていたのは、レフリーが何を求めているかまで考える必要があることや、「できるだけ短い時間で正しい結果を導き出す」という時間との闘いです。システムを操作するオペレーターとの協働が欠かせないことも紹介されていました。

2026年7月からのTMOプロトコルで何が確かめられるか

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競技規則6.16が「そのときに定められているTMOプロトコル」に従うとしているため、TMOの細かな運用はプロトコルで決まります。ワールドラグビーが公開している最新版は「Implementation: 1 July 2026」と記された文書で、確認できる反則の種類と、どこまで時間をさかのぼれるかが表にまとめられていました。

「明白で明らか」な反則に絞り、重大な不正は最後の再開以降までさかのぼる

プロトコルは冒頭で、TMOの主な目的を、重大な不正プレーとトライの場面に関する「clear and obvious」な反則について正確な判定を下し、試合の公正さを保つためのチームを支えることだとしています。clearはリプレーを見てすぐに簡単に気づける反則、obviousは試合への影響が分かりやすい反則という意味だと定義されていました。言い換えれば、何度もスロー再生しなければ分からないような細かな接触を探すための仕組みではありません。

文書には、プロトコルとその運用はワールドラグビーのゲームフィロソフィーを支えるためのものだとも書かれています。挙げられていたのは「Protect the Player(選手を守る)」「Embrace the Contest(競り合いを大切にする)」「Promote Continuity(プレーの継続を促す)」「Win the Fan(ファンを引きつける)」の4つです。映像確認が長引くとプレーが途切れてしまうため、確認する範囲をあらかじめ絞っておく考え方だと読み取れます。

正式なTMOの見直しは、マッチオフィシャルがイエローカードかレッドカードが必要かもしれないと考えたときに始められます。対象は危険なプレー(競技規則9.11〜9.26、ただし9.19を除く)、故意の反則(9.7)、不行跡(9.27〜9.28)です。さかのぼれる範囲は「最後にプレーが再開されて以降」とされ、ペナルティやフリーキックの後のタッチキック、クイックタップ、クイックスローは再開に数えないと注記されていました。

この見直しとは別に、「バンカー」と呼ばれるファウルプレー・レビューの仕組みもあります。ワールドラグビーの解説によれば、大型ビジョンでのリプレー2回でもレッドカードに当たるか判断できないものの、少なくともイエローカードの水準と判断した場合、レフリーは両腕を交差させて正式な見直しを示します。選手はイエローカードと同じく10分間退出し、その間に専任のFPRO(ファウルプレー・レビュー・オフィサー)が最大8分かけて映像を確認し、イエローのままかレッドに引き上げるかを決める流れです。

トライ前の「2フェーズ」と、試合中のライブコール

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トライの場面での見直しには、どこまで前のプレーを見てよいかという時間の決まりがあります。ここを知っていると、トライが取り消されるかどうかを予想しやすくなるでしょう。あわせて、TMOが自分から声をかける「ライブコール」についても見ていきます。

「2フェーズ」の範囲と、TMOのライブコール

プロトコルでは、得点そのもの(競技規則第8条)や、オブストラクション・オフサイド(9.1〜9.6)などの反則は、トライが決まる前の最後の「2フェーズ」の中で見直せるとしています。ただし最後のプレー再開より前にはさかのぼれません。2フェーズとは、ラックまたはモールが2回だけ起きたことを指し、3回目のラックやモールより前は確認できないと明記されていました。

ノックフォワード、スローフォワード、タッチについては、最大で直前の2フェーズか、最後の「アタッキング・パッセージ」までが範囲です。アタッキング・パッセージは、最後にボールの保持が入れ替わってからのプレーの流れと定義されています。つまり、トライの起点が相手ボールを奪った直後の攻撃なら、そこから先のノックオンなどが確認の対象になるという整理です。トライ直後にリプレーが何フェーズ前まで戻るかを数えてみると、TMOがどこを見ているのかが分かりやすくなります。

プロトコルの表には、同じ「2フェーズ」の範囲で見直せるものとして、タックルの成立(14.1〜14.3)、モールの形成(16.2、16.7)、クイックスロー(18.3〜18.7)、ペナルティキックやフリーキックの蹴り方(20.2、20.11)、インゴールの判定(21条)も並んでいます。どれも、得点の直前のプレーに関わる判定ばかりです。

正式な見直しとは別に、プロトコルはTMOによる「ライブコール」を認めています。アシスタントレフリーが反則を知らせるのと同じように、危険なプレー、ノックオン、スローフォワード、タッチといった明白で明らかな反則について、プレー中に起きた時点か、リプレー1回で確認できた直後に伝える仕組みです。プレーを長く止めずに判定を正せる点が、正式な見直しとの違いといえます。

ボールがプレーの外にある間にも、TMOはレフリーが正しく再開できるよう情報を伝えられます。対象は、スクラムやラインアウトでボールを入れるべきチーム、スクラム・ラインアウト・ペナルティ・フリーキックの正しい地点、タッチやインゴールに関する正しい再開方法の3つです。レフリーの判断を細かく補う役割まで含めて、TMOは試合の進行に深く関わっていることが分かります。

スタジアムとテレビでTMOを楽しむ見方

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TMOの時間は、知識があれば観戦の楽しみの一部になります。レフリーの合図や映像の流れ方に注目すると、何が確認されているのかを自分で推理できるからです。最後に、合図の見分け方と、これからのTMOの動きを紹介します。

四角形と両腕の交差の合図、遠隔TMOハブなど変わる運用

ラグビー解説サイトのノーサイドTVは、レフリーが人差し指を伸ばして四角形を描く仕草がTMOを求める合図だと紹介しています。同じサイトによると、日本のトップリーグでは2014年にTMOが公平性を重視して導入され、レッドカードの数が2013年の0枚から2014年には3枚になったとのことです。この数字はサイトの記載によるもので、公式の統計とは突き合わせられていない点に注意してください。

先に見たように、両腕を交差させる合図はバンカーへの正式な見直しを示します。四角形なら今その場で映像を見る、腕の交差なら選手を10分退出させたまま別の担当者が確認する、と区別して覚えておくと分かりやすいでしょう。Xでは、2026年10月24日の日本代表とフィジーの試合でTMOの結果デンジャラスタックルが認定されてシンビンとなり、そのシンビンがオフフィールドレビューの対象になったと速報する投稿もありました。

ワールドラグビーは2026年7月7日付の発表で、ワールドラグビー・ネーションズカップとジュニアワールドチャンピオンシップで、完全に遠隔で運用するTMOハブを初めて導入すると明らかにしました。これまでTMOとFPROは試合会場にいましたが、2つの大会のTMOは英国にある中央のハブから担当するとのことです。この試みは、ラグビーワールドカップ2023と2025で行った遠隔のFPROを土台にしていると説明されていました。

同じ発表によると、TMOは中継の演出とは関係なくすべてのカメラアングルにアクセスでき、Hawk-Eyeの分割画面やズームといった機能も使えるようになります。狙いとして、判定の速さ、一貫性、正確さを高めつつ、競技にかかる費用を抑えることが挙げられていました。日本でも、Xには2026年10月10日から11日に大阪でTMOとFPROの研修が行われ、花園ラグビー場の試合で実地に取り組んだという投稿があり、運用を磨く動きが続いているようです。

まとめ:TMOを知って観戦を深める5つのポイント

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TMOは試合を止める厄介な時間ではなく、決まった範囲の中で判定を正すための仕組みです。最後に、この記事で確認した内容を5つにまとめます。

  1. TMOは競技規則6.15で、グラウンディング、タッチ、ゴールキック、トライに関わる反則、不正なプレーの5つを映像で確かめる役割とされている
  2. 見直しを提案できるのはTMOを含むマッチオフィシャルで、運用は2026年7月1日実施のプロトコルに従う
  3. 重大な不正プレーは最後のプレー再開以降、トライの場面は直前の2フェーズ(ラックかモール2回)までが基本の範囲になる
  4. 指で描く四角形はTMOの合図、両腕の交差はバンカーでの見直しで、FPROは最大8分で結論を出す
  5. 明らかな反則にはTMOがライブコールで直ちに声をかけ、ボールデッド中も再開の地点や方法を伝えられる

次にスタジアムやテレビでTMOが始まったら、リプレーが何フェーズ前まで戻っているか、レフリーがどちらの合図を出したかに注目してみてください。審議の中身が見えてくると、判定を待つ数分間も試合の一部として楽しめるようになるでしょう。

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